今回の事故原因をきっちり総括すべし

 世論は反原発になりかかっている。停止中の原発の再稼動にもストップがかけられていものある。国際的にも日本の事故の教訓ということでで、イスラエルは原発建設を止めたし、イタリアでも国民投票で脱原発を決めた。もっとも九州の玄海原発では再稼働させました。営利企業である以上当然のことかもしれませんが。

 いずれにしても原発を当分は動かし続けるところもあるし、廃止するにしても、設備や大量の燃料とは半永久的に付き合っていかねばならない。例えば、事故の原因は、津波のせいにしようとしているようだが、電源喪失の直接の原因は津波の及ばない送電線の鉄塔の倒壊であるし、1号炉や3号炉では、水素爆発以前に放射能漏れや圧力低下の事実があり、原子炉自体や重要な配管が破損したということだ。 
津波対策や「全電源喪失対策」とともに、全国の原発の耐震安全性に関わってくる問題である。例えば関西電力も無視していていた過去の津波のことを気にしだしている。もっとも、もんじゅをはじめとして、多くの原発が断層の上や近くにあるから、もっとも正しい安全対策は、停止であろうが。

 (注)もんじゅは、福井県敦賀市にある日本原子力研究開発機構の熱出力71.4万kWのナトリウム冷却高速中性子型増殖炉である。プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使用して消費量以上の燃料を生み出す高速増殖炉による発電の実用化のための原型炉。事故で停止することばかりで、既に何兆円ものお金が消えている。しかもいまだに高速増殖炉を推進している国は日本だけ。とにかく早く止めろ、です。


原発事故は終息に向かっている?

 

原発事故は収束に向かっているといえないのではないか。9月下旬に冷温停止状態になるのが早められてられるとの報道がなされている。

 しかし、これは早く事故を収束したいという東電や政府の願望を報道用の事実にすりかえただけではないか。大本営発表ではないか?(太平洋戦争時に戦火を誇大に報道し、戦争が不利なのに、有利だと錯覚させたこと)。単に自分が安心したいことを国民に押し付けているだけだと思うのだが。地元住民、現場へ早く帰りたいとか、風評被害が無くなって欲しいと思う商売人の人たちなどに空しい期待を与えるだけでは無いか。 
報道するにしても、願望は願望として、早めたいという程度の報道にすべきだ。
あくまでも、事実を中心にすべきでないか。

 福島の地元新聞福島民友の9月26日の報道は厳しい見方をしている。「冷温停止政治判断か」「100度間近の第一原発」「年内を宣言も達成いつ」「甘い定義に専門家からも批判」とのタイトルがある。

 元々原発事故が収束に向かっているとの報道は4月からの工程表にも現れる。これだって早すぎた。この工程表には無かったが、その1ヵ月後に原発1号炉から3号炉の3機ともメルトダウン(メルトスルー)の事実がようやく公表された。

 1979年3月のアメリカのスリーマイルの事故では、燃料棒が下のほうで固まり、それを取り出したり、固まったのを壊したりする新しい機械を作るなどして、撤去には10年かかっている。色々な機械、ロボットを作ったりして苦労している。

 今回の福島の事故では、燃料棒の溶解の程度が遥かに大きく、しかも、燃料棒が格納されている圧力容器をつきぬけ、格納容器に落ち、場合によってはその外側の格納容器も突き抜けているといわれている。スリーマイルとは「状態が異なる」。しかもそれが3つもあるし、当然それぞれが同一ではない。

 まだ、原発事故収束の見込みを述べられる時期では無いのではないか?


電力供給不足になるという宣伝は、原発を維持させようとする意図のもとでの大本営発表?

元々、日本の電力会社の発電所の発電能力は、原発が無くても、十分に足りることになってます。相当以前から指摘されていたことですが。

例えば、アエラ11.7.18号記事「作られた電力不足」によると、2009年の供給ピークは1億5900万KW、火力と水力の供給容量は、1億8800万KW(原資料電気事業便覧)

 今回の事故で原発が止まったときに、東電はすぐに計画停電を始めた。私は上記のように、供給電力には余力があるのに何でこんなことするのかと不思議に思ったのです。計画停電で実害を被った人は損害賠償請求も可能だったのではないでしょうか。

 実際、例えば福島の原発群の直ぐ南に広野火力発電所があり、380万kwの発電能力を有します。ここも余り使ってなかった筈です。原発1基が100万kwとすると約4基分です。 
この広野発電所はオンボロのようですし、地震で被災して、補修に多少時間を要したようですが、5月には稼動するようになったようです。

 5月14日の東京新聞では「東電は出力三百八十万キロワットの福島県・広野火力発電所が復旧し、今夏の予想ピーク需要、五千五百万キロワットの供給確保に見通しがついたのに、国会議員らにはそれを伝えながら、肝心の消費者にはだんまりを決め込んだ。」「供給確保の情報を表に出さず、電力不足を大々的にキャンペーンすることで、脱原発を牽制(けんせい)したと受け取られても仕方がない。」と厳しく批判されてます。

 関西ですが、和歌山には御坊、海南といった火力発電所があり合計400万kwの発電能力があります。資源エネルギー庁のデータによれば、今年の3月では、発電所の稼働率は、原発約80%、火力約40%となってます。

 とすれば、御坊や海南の火力発電所をフル稼働させれば、原発2基分以上、少し前に発電を再開した舞鶴の火力発電所、70万kwを加えれば3基分以上になります。ついでに少しつけ加えると、主に夜間の原発の電力を利用した揚水発電所というのがあり(但し、火力でも代替可能とか)、100万kw単位の発電能力があって、これも稼働率は低いようですし、発電効率も悪いようです。ただ、昼間の発電力の補完にはなるようです。7月26日の毎日新聞によると、電力会社が、揚水発電の稼動力を過小評価しているとの記事がありました。

 上記引用の東京新聞にあるとおり、東電による計画停電や、電力不足キャンペーンは、原発生き残りのための誇大宣伝=大本営発表だと思います。

 今年の夏も暑そうですし、電力が多少不足することもあるかも知れませんが、今止まっている原発をあわてて動かさなくても、「直ちに供給能力に影響のあるものではなく、心配はいらない」と官房長官殿が宣言して頂きたいものです。

 おまけ・・節電に努力しようとすること自体には反対しません。例えば、ネットで検索すれば判ることですが、夜間の日本は明るすぎます。


原発はいらない。

 原発は順次廃止を。関西ではまずもんじゅ止めろ、ですね。
今回の事故そのものの問題点は別に論じる。ただ、原発は一旦事故が起こると大変なことになる、ということだ。そのことは今回の事態が示す通り。そもそも「原発はそれ自身の本質において潜在的に危険であり、それゆえに大事故を防ぐための安全装置がすでに整っているかどうか、たえず問い続けなければならない」(スリーマイル事故報告書)のである。
世界にある原発の多くは、地震の心配の無い地域である(フランス、アメリカ中東部)、地震の起こる地域に、このように多数の原発があるのは、日本のみ。しかも断層の上(浜岡)やすぐ近くにあるのは日本だけだという。

 人間のすることには絶対では無い。機械も常に安全に動くわけではない。

 それと、操作が簡単でないし、本件の事故の後でも、弁の操作を間違えた等々の操作ミスがあり、配管の破裂や計器の故障も起こっている。スリーマイル島の事故が、計器の表示が誤っており、それで操作も誤ったことが大きな原因であることは有名なことである。

 原発は、本体は頑丈である。しかし、「輻輳的に」多くの配管、機器が接続、運用され、過去にも多くの事故が起こってきたし、今後も起こりうる。

 更に今回の福島第一原発の事故で、私が想定外だったのは、4号炉の燃料プール。原発が停止していても事故は起こりうるわけです。

 地震においても、仮に原子炉本体は問題なくても、周辺機器が故障し、大事故寸前の事態は常に想定しうる(例、最近の柏崎原発事故)。

 とりわけもんじゅは、冷却水が、ナトリウムである。空気と触れれば燃焼し、水に触れれば爆発する。配管が裂ければ、大事故にも結びつく。 
しかも、もんじゅは活断層から1km。過去の震災、戦後の福井大震災は、戦争末期からの東南海地震に連動したものであり、今回も最近の震災に連動して大震災が起こる可能性も高い。

 以上の通り、原発止めろ、まずもんじゅ止めろが明確な結論である。


原発はエコですか?

原発は、火力発電所と比較して、CO2が少なく、エコというのは事実ではないでしょう。 原発からは、大量の温水が出てくる。例えば、建設中の大間原発は、放流する冷却水量は毎秒91トン、しかも周囲の海水温より平均7度も高いとのことです。日本中の原発から流れている冷却水の総量が、一般の河川の海への放出量の合計を超えることもありうるとか。このような事実だけでも地球温暖化に影響が少ないなんて何で言えるのですかね。水温が上昇すれば、海水に解けてるCO2も気化するでしょうし。