主に福島の長期間帰還困難とされる被災者の方の為の賠償請求アドバイス(作成中途2013/6/1)

(序)加害者側が賠償の基準を決めるのはおかしいですね。

2013年5月の朝日新聞の「プロメテウスの罠」によると、東電に対する賠償請求は、特に財物等に対するものが、提示額が極めて低いとされています。
私も、東電の対応が悪い悪いという苦情を沢山聞きました。しかし、東電側の対応は、大量の被災者を簡易迅速に処理しようというもので、基本的に個別の事情や立場の違いに配慮するものではありません。
それに、そもそも、加害者が賠償の基準を決めるなんておかしいです。東電側が出来るだけ簡単に、安く、早く済ませたいのはあたりまえです。東電に誠意ある対応を求めることは、「金品を盗まれた泥棒を捕まえて、金返せ、戸締りをきちんと直せと言うようなもの」という人もいます。

 現地では賠償基準の高低を表す言葉として「士農工商」といわれれているそうです(サラリーマン(士)や農家には厚く、自営業者は最低の補償しかない、との意味)。
自営の方は、地元での事業再開は不可能でしょう。だから、廃業を前提とした賠償請求をすべきです。放射能問題の影響もそうですが、4年も5年も人が住まなかった町に帰還する住民はほとんどいないでしょう。
「地域住民」「東電関係者」に依存していた「商業」は再開は困難でしょう。勿論避難先等で営業の再開は可能でしょう。でもそれとともに過去の清算もしておいたほうが良いでしょう
以下、この「商」の方にスポットを当ててアドバイスをします。

 財物の補償についても、若い、賃貸居住の夫婦、子供多数などというのが有利なのがおかしい、という苦情を聞きました。「60歳位の夫婦、老父母は最近他界、子供はいるが、独立して近所に住んでいる。家は10部屋以上あるし、価値のある家財道具も多数ある。上記若年夫婦より賠償が少ないのはおかしい。」とおっしゃるのですが、もっともですが、これも個別に損害を主張して交渉するしかありません。浪江町の住民の約半数の1万人超が5月29日、東電に慰謝料の増額などを求め、ADRに申し立てを行いました。個々の事情もふまえつつ、皆さんが弁護士に依頼し、このような手続きを取ることをお勧めします。ま、同(種)業者の小集団で申立をするのが効率的と思います。

1 弁護士に相談して下さい!!一人一人請求の内容が違います。

東電の提示に不満のあるかたは直ちに弁護士に相談してください。 「弁護士に相談すると、金がかかるし、時間もかかる」私の面前でそうおっしゃる方がいるのですが。そういう方は泣き寝入りするしかなくなりますよ!!
交通事故の相談と良く比較されますが、交通事故でも弁護士に頼んだほうが、請求の中身が明確化されます。漠然とした交渉をするよりも賠償額の上積みがなされます。不利になることは決してありません。ただし、弁護士に相談するときに、費用がどれだけかかるかは、ちゃんと確かめてください。

 弁護士に頼めば、ADRとか、場合によっては裁判とか請求の手段の選択も考えて対処してくれると思います。

ご自分でも請求可能ですが、手間もかかります。

 なお、ご自分でADRに申し立てたが、「次々と資料を要求されたあげく、まともな対応をしてもらえなかった」という苦情も聞きました。対応したADRの弁護士にも問題があったかも知れません。しかし、個別事情を他人に説明するのは手間、工夫、時間は相当かかるのが普通です。私はたかが交通事故でも現場に5回も足を運んだこともあります。 請求の為の資料作りには手間がかかるのは仕方がありません。 それと、本人が東電(の弁護士)と直接交渉しても「なめられる」こともあるでしょう。 まず、弁護士に相談してください。
なんで被害者なのに、手間をかけて資料を用意しないのか、と言われることがあります。これは、交通事故の被害者にも良く言われることですが、個別具体的事情は自分しか判らない、しかもそれを他人に判りやすく説明することは大変困難なことです。しかし、これは被害者側がやるしかないです。それをスムーズに進めるためにも、自分の側に弁護士を頼んで下さい。

2 営業補償の請求例

ゼロ申告、低額申告の方は、特に注意して欲しいのですが、営業の実態があった限りそれなりの請求は可能です。
交通事故には算定基準に平均賃金というのがあります。自営業の方で、「バイト(「士」=給与所得者)の人は沢山もらっている(例、週に2,3日勤務、月7万円なのに(月15万円×2年)自分に提示された額は少ない。」などと嘆く方がいます。

交通事故の基準によるなら(大阪弁護士会「交通事故損害賠償算定のしおり」より)、例えば、60才なら、年齢別平均賃金というものがあり、
男性なら40万6300円、女性なら25万2700円。ライプニッツ係数は就労可能年数を12年としても、8.863ですから、
例えば男性なら、40万6300円×12×8.863≒4320万円となります(  これは、交通死亡事故の場合を基準にしているので、本来なら、ここから生活費控除というのがありますが、引く必要はありません)。

 交通事故の賠償基準は、お互いに加害者にもなり、被害者にもなる、という場合の賠償額の算定基準ですので、原発事故の場合には、そのような前提が無いわけですから、これが最低限度(底値)です。またこれは給与所得者のものであり、だから、女性が低い訳ですが、自営業では区別する理由はありません。とすれば、例えば、60才自営業の女性の方で、母親が平均余命まで(+27才)働いた実績があるなら、

 40万6300円×12×14.643≒7140万円という算定も可能です。

以上のように一旦清算した形にしても、復帰したらそれを元手に事業再開も可能です。

3 財物の補償

例えば交通事故の場合、新車を買った直後に事故を起こされて自動車が壊れても、査定(物損)の原則は「中古価格」です。購入価格を大幅に下回ります。この根拠は、前記のように「お互い様」の理屈があるからです。
しかし、原発事故にそのような理屈は全くあてはまりません。新車が原発事故の放射能汚染で使用不能になったら、当然新車価格及び手数料等を請求できると思います。

住宅購入のことが問題となってますが、新築購入価格(再調達価格)が補償されるべきでしょう(公共事業等の場合の収用価格も同様の発想ですが、ここでは特に区別はしません)。これだって、今まで住めたものが自分には何の落ち度も無く使えなくなっている訳ですから。もし原発事故当時住んでいた当時の環境で再び住めるようになったら、返せば良いでしょう(ありえないことと思われますが)。

前記プロメテウスでは、弁護士に集団で頼んだが遅くなったので止めた話、遅い原因は東電の対応の悪さにあるという話、東電の対応の悪い住宅補償の一般的基準作りなどの話がありました。参考になるますが、とにかくとにかく弁護士にまず相談にいって、自分はどうしたらよいのかアドバイスをもらってください。くどいようですが、あくまでも補償の内容は一人一人違います

なお、直接関係ないですが、「潜入体験ルポ/東電福島第一原発事故「賠償金算定」驚愕の実態」というのが週刊朝日5月3日号に出てます。

☆☆☆以下の内容について
以下は震災当時に作成したレジュメです。その後状況が変わっても特に内容を変えていませんのでご注意下さい。

被災者のための法律相談(作成中途)最終更新日:2011/07/13

ご家族、友達を亡くされた方々に心からお悔やみ申し上げます。

私は、阪神大震災の時に、避難所を回って法律相談をしていました。以下は、今回も現地を訪れ、相談に行った際に使ったレジュメです。

国(行政)の政策は、「首相官邸」
法律問題・生活問題の基本は
「福島県弁護士会」
「岩手弁護士会」
「仙台弁護士会」
それぞれのホームページを参照してください。

今回の災害で、被災者の方に接して一番強く感じたのは、「東北人」の礼儀正しさ、辛抱強さ、我慢強さです。
皆さんが必ずや粘り強く地域を再生していくことを確信しました。私も、少しでもお役に立てばと思って、このページを作成しました。

1 被災者を金銭面で支援する制度

 当面の生活費の工面方法として生活福祉資金の貸付制度があります(緊急小口貸付、 10万円まで)市町村の社会福祉協議会まで。
詳しくは,岩手県(019-651-3111、内線5425)、福島県(024-523-1250)、宮城県(022-225-8478、仙台市022-223-2142)
なお、これ以外にも、災害援護資金(350万円、無利子)などの制度があります。市町村の窓口でお聞きください。

1 基本的給付制度 標準的な金額の紹介ですが、所得制限等もあるので注意!

①義援金(日本赤十字社等)

第一次として基本的に、「住宅全壊・全焼・流失、死亡、行方不明者は35万円」、「住宅半焼、半壊は18万円」、「原発避難指示・屋内退避指示圏域の世帯は35万円」 これは、自治体が独自の寄付金を付加するなどして、増加もあります。なお、③同様、兄弟姉妹も受給できる扱いのようです。

②被災者生活再建支援制度による給付

→災害による住宅が全壊するなど,生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対して支援金を支給する制度です。
A住宅の被害程度に応じて支給する支援金(基礎支援金最高100万円)
B住宅の再建方法に応じて支給する支援金(加算支援金、最高200万円)
例えば,住宅を全壊で失った方には,基礎支援金として100万円が支給され,その方が,申請先は市町村です。申請期間は,基礎支援金が災害発生日から13ヶ月以内,加算支援金が災害発生日から37ヶ月以内です。
なお、今回の災害の重大さに鑑み、基礎支援金の増額、給付の要件(所得制限等)、加算支援金(領収証等が必要)の要件の緩和をしてほしいものです。

③災害弔慰金の支給等に関する法律による給付

A災害弔慰金→災害により,世帯主が亡くなった場合,最大500万円,その他の方が亡くなった場合,最大250万円を,ご遺族に支給する制度です。 支給の順位は,配偶者,子,父母,孫,祖父母であり,申請先は市町村。なお支給の対象に兄弟姉妹が含まれていませんでしたが、同居したり、生計を同一にしている場合には支給可能になるように法律が改正されました。

B災害障害見舞金
→災害により,世帯主が重い障害を受けた場合には最大で250万円,それ以外の方が重い障害を受けた場合には最大で125万円を支給する制度です。

④東京電力の仮払金

 福島第一原発の事故を受けて、避難住民らに1世帯100万円、単身世帯には75万円を支払うと正式発表した仮払金。市町村が窓口になるそうです。詳しくは以下の東京電力のページ(リンク切れ)をご覧ください。

⑤災害救助法に基づく給付

→災害救助法では,避難所の設置や食事の提供のほか,被服,寝具その他の生活必需品の給与又は貸与,災害に係った受託の応急修理,生業に必要な資金,器具又は賃料の給与又は貸与,学用品の給与,埋葬というような支援が定められています。
例えば,学用品の給与は,災害で学用品を失った児童・生徒に対して,教科書,教材,文房具,通学用品を支給します。現物支給が原則ですが,知事が必要に応じて,金銭を支給して給付することができます。

例−1「住宅の応急修理制度」について 建物補修可能な方のみです!
大規模半壊又は半壊の被害を受けたこと。なお、全壊の場合でも、応急修理をすることにより居住が可能となる場合のみが対象となります(対象になるかたはそれほど多くないと思います)。その応急修理に要した費用について、市が直接業者に支払う制度です。一世帯あたりの限度額は52万円です。

例−2「被災した世帯に対し日常生活に欠くことのできない被服・寝具・その他生活必需品の給付」八戸市の例、1人世帯全壊28,600円、大規模半壊、半壊(床上浸水も含まれます)9,100円。

2 給付について注意その1 方法、時期等

 上記の通り、主に市町村が窓口になります。性質も異なることに注意。貸付、給付は文字通りのものですが、東電の仮払金はあくまでも仮払いで、将来には実際の損害に応じた支払いがなされる予定でしょうがその金額算定方法等は未定です。

できれば損害を証明する資料を用意しましょう(例えば、出荷しようとしたが拒否された商品の数、販売予定価格を示す資料等)。
(なお、厳密に言うと、原発による被害は、災害(天災)なのか、人災(東電の過失によるもの)なのか、という論点もありますが、地震、津波も重大な原因になっていることも明らかなので、ここにあげた給付のうち、原発被害の方の給付が①④に限定されることはあってはならないと思います)

★受給資格の点についてですが、被災者(死亡者)等の親族(相続人)のうち、兄弟姉妹が受け取れるか、ということが問題になっています。
①については可能になりました。③についても法律を改正するようです。

3 給付の要件等・・特に「り災証明書」に注意

 上記にもありますが、給付の種類によって、給付を受けるための所得要件(年収)があり、世帯の人数等によって金額も異なります。

要件等は窓口の市町村に問い合わせて下さい。  以上は以前から一応明確な過去の事実によるものですが、一番問題なるのはり災証明です。多くの場合は市長村が発行する「り災証明(書)が必要となります。そして、そのり災証明の内容には「全壊・全焼」「半壊・半焼」「一部損壊」等によっても給付内容(金額)は大きく異なります。

今回の災害では、例えば航空写真などを基礎に、津波で大打撃を受けたと思われる地域は、簡易に全壊等の認定がなされるようです。早期に大量の認定がなされざるを得ないため、限界的な事例では正確な認定がなされない事態も発生します。 一つの目安として、内閣府の「災害に係る住家の被害認定基準」というものがあります。

同基準については、こちらのページ(pdf)(リンク切れ)でご覧ください。認定に不満であれば(例えば、「全壊」のつもりが「半壊」としか認定されなかった場合)不服申し立てをして、再調査を受けることも可能です。 申請の際には、パスポート、運転免許証など、本人確認が出来るものを持参しましょう。これらも無くした場合は再発行も可能です

2 生命保険、傷害保険等はどうなってるのか

証書を無くしている人が多いと思いますが、保険証券はなくしてもデータがあるのでだいじょうぶ。
まず御本人が保険会社に電話して、氏名と生年月日等を告げて契約内容を聞いてください。保険会社も判らないなら、
問い合わせ先  損保協会0120-107-808 携帯電話PHSからは、03-3255-1306だそうです。生命保険相談所 03-3286-2648
ついでに年金についての相談は、、0120−707−118で

勤務先を通じて保険に加入している方は、会社の関係者に聞いたりしても判明することがあるでしょう。また、自分で加入している人で、引き落とし通帳を無くしていても、銀行に履歴を聞いたり(相続人でも可能)、通帳の再発行を求めたりした時に判明するでしょう(これは、本人のみ、なお、行方不明とかの場合の対処は別途説明します)。 いずれにしても、直ぐに請求権が無くなるわけではありません。

★なお、保険金出る、出ないのおおまかなところは、
◎地震保険、津波にも適用 保険金の支払いにつき、壊滅的被害を受けた地域は、簡易に請求が可能になるそうです。 
◎簡易保険、◎JA共済(強力!)
◎生命保険(保険会社が免責約款不適用を表明)
△車両保険、△船舶保険・・特約が無ければダメ。

なお、火災保険は(地震保険が無い場合)。火災保険としては保険金の支払い対象とはなりません。ただし、「地震火災費用保険金」により保険金額の5%(300 万円を限度)が出るのが原則です。

なお、無くした、で良く聞かれるのは、権利証。権利証を無くしても、不動産の権利は無くなりません。その意味では権利証には何の価値もありません。権利証は不動産を売ったりするときには必要ですが、無くても売れます。方法は、落ち着いてから、司法書士さんに聞いてください。なお、商売等をされている方で、手形、小切手を無くした方は、権利を回復するには公示催告という手続きが必要です。これについては弁護士や裁判所に聞いて下さい。

3 不動産について

 建物が壊れてしまったら、登記の抹消の必要があります。ただ、これについては行政が職権でやってくれるようです。それと勿論今後の固定資産税も免除されると思います。なお、同様に、壊れた自動車の登録の抹消手続も必要です。これについては費用は自分ですれば数千円で済むと思います。ただ、これらも落ち着いてからで良いと思います。なお、自動車については、3月11日以降に免許証や車検の期限を迎える方は、当面の延長の措置がなされました、これらについて詳しくは、 上記「首相官邸」のホームページを参照してください。 今回の震災に関する重要な生活情報は主にここにあります。

4 行方不明の方の処遇

1 失踪宣告制度(民法30条2項)

→津波等の危難が去った後,1年間生死不明である場合に,裁判所の決定により,死亡したものとみなす制度です。
これにより,死亡が確認された場合と同じく相続が開始します(実際には生きていたという場合には,失踪宣告を取り消す手続をとる必要があります)。勿論失踪宣告は行方不の方をを死亡扱いするものです。決して簡単に「しなさい」とも「したほうがよい」とも申し上げるものではありません。多くの方はその帰りを待たれるのが心情でしょう。ただ、法律上のしくみはこうなっています、ということをご理解して頂きたく、説明をさせて頂くものです。

 ご遺族が生命保険金等死亡を原因とした給付を受け取るのは、通常死亡(の扱い)が確定したときです。なお、死亡届について、今回の災害に関しては,行方不明者が多いこともあって、手続が簡易化されました。法務省のページを参照してください。

2  不在者の財産管理制度(民法26条以下)

 これは、前項とは違って、死亡が確定していない(死亡届を出していない)場合の対処方法です。
すなわち行方不明の方に代わって、その方の財産を管理するための制度です。どうするのかということですが、この場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらいます。例えば、夫婦の一方が行方不明となり、その方が受け取るべき給与を受け取るとか、自宅再建の為に、共有財産を売却することなどです(但し、管理人は民法103条に定められた権限を持っていますが,それは主に財産を保存することです。遺産分割協議をしたり,不在者の財産を処分する行為は,財産管理人の権限を超えていますので,このような行為が必要な場合は,別に家庭裁判所の許可が必要となります、民法28条)。

 なお、子供の両親共に行方不明の場合もとりあえずこの制度を利用することも可能でしょう。ただ、この場合は後見人の選任も可能です(児童相談所でも同様のことが可能です)。そのほうが直接的です。認知症等高齢者の方で、事実上家族が財産管理をしていて、その方が行方不明になった場合には後見人(等)を選任してください。

3  同時死亡について 一度に数名の家族を亡くされた方の問題

既に行方不明の方の問題について触れましたが、ここでは一度に家族を亡くした方の問題について触れます。これも大変つらい問題です。

 民法32条の2には同時死亡の推定という規定があり、数人の者が死亡した場合、そのうちの一人が他の者の死亡後に生死不明のときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定します。 これは主に相続(第882条)の場合に問題になりますが、相続において、死亡の時期の前後によって、相続人の利害関係が大きく変わってきます。  今回の震災のように、多くの方がほぼ一度に無くなり、厳密な死亡時刻がハッキリしない状態で複数の家族、親族が死亡した場合などでは、特に明確な根拠のある事実((同時に死亡したとされた時期と異なる時期に死亡したこと)がない限り、同時に死亡したものとされます。、この場合、被相続人(死亡した人)とその推定相続人(生存している家族)が同時に死亡となった場合には両者の間には相続が生じないことになります。  例えば、夫婦と子供がいて、夫婦の片方(例えば妻)が死亡した場合には、通常夫と子供が相続人となります。しかし、夫も妻も地震や津波の時に家にいて、同時に死亡したと思われる場合には、相互に相続は発生せず、夫婦それぞれが有していた財産はすべて子供が相続することになります。なお、夫婦の一方のご遺体は見つかったが、もう一方は行方不明のまま発見されていないような場合で、前項に述べたように認定死亡の扱いになった場合にも、原則同様の扱いのなるものと思われます。

  例えば、子供がいない場合には夫婦が同時に死亡した場合には、夫婦間で相続は発生せず、夫、妻、それぞれの財産を、それぞれの兄弟姉妹が相続することになります。ただ、このような事例(子供がいない)で、夫婦が同時に死亡していない場合には、一旦先に死亡した片方の財産をもう一人が相続し(相続分は財産の4分の3、兄弟姉妹は4分の1)、その後にもう片方が死亡すれば、先に死亡した方の財産を相続した上で、後に死亡した方の兄弟姉妹にその方の財産が相続されます。同時死亡かどうかで、相続する割合が大きく異なってきます。

 この問題は、多くのの方(家族、親族)が犠牲となり(しかもその一部の方の死亡時期が明らかに異なるような場合には)、複雑かつデリケートな問題も生じえます。  
死亡された方の相続放棄・承認をなすべき期間につき、通常は、相続の開始あったことを知った時から3カ月にすることとなっていますが(民法915条)、この期間が東日本大震災の被災者であって(平成22年12月11日以降に)相続の開始があったことを知った方(相続人)についてを平成23年11月30日まで延長されました。詳しくは上記の法務省のページを参照してください。

 なお、死亡者の債務の存在を、相当後になって知った時には、その時から、前記期間が進行するものとされています(但し、事案によっても異なるので注意)。

 以上の死亡や相続に関する問題は、複雑、微妙なことも多いので、必ず地元の弁護士に相談してください。

★義援金が震災から1ヶ月を経てやっと日本赤十字から被災自治体に渡されるようです。具体的支給手続きに至ったところはまだ少ないようですが。阪神の時は2週間後でした。手続きには罹災証明が必要になるようですが、重大な被災地域はかなり明確です。被災者への被災者生活再建支援法の支援金の支払い手続きを簡素化し、津波の被害で長期避難が避けられない地域であることを航空写真などで確認し、支払うそうです(4.14追記)。職員が犠牲になったりして、行政の機能が十分で無い市町村もも多いと聞きます。一刻も早く被災者に届いて欲しいものです。日弁連が弁護士を派遣するなどして手続きを手伝ったらどうでしょうか。

★この義援金の支払いに関しては、阪神の時に、悔やまれることがあります。元々、チビチビ配っていると評判が悪かったのですが、本来の趣旨に沿うのかと疑問になるもの、例えば、賃貸住宅入居の補助というものでした(30万円)。これは、端的に言って、仮設住宅からの早期の退去を促進する為の、行政の意向に沿ったものでした。被災者の方には評判が悪く、避難所の代表者の方から、「差し止めの裁判とかできないか」と言われました。私は「難しい」と答えてそれまででした。後から思えばこの時に弁護士として何かすべきでした。

阪神の義援金は「ルミナリエ」の資金にもなったそうです。これや、「賃貸住居入居促進補助」を(行政が)するなと言いません。しかし義援金の趣旨は違うでしょう。被災し、多大な損害を被り、不安定な(避難所)生活を強いられる方たちへの援助の為に多くの皆さんがカンパを寄せているのだと思います。集まった度に、簡易迅速かつ平等に被災者の皆さんにに配るできです。(2011.4.11)。

弁護士の皆さんへ 避難所の歩き方

1 法律相談の方法(重要!!)

現地へ行ったら、こちらから、積極的に被災者に声を掛けて、勧誘しましょう。皆さん悩みを持っているのになかなか集まってくれませんから。ある避難所で相談会の後に、私が避難所のの責任者に「こんなに宣伝しているのに何で皆さん集まってくれないの?、しかも、何とか引っ張って来たら、皆さんオーバーヒートするのに」と聞くと、「これが東北人。控えめな人たちだから」とのご回答。 もっとも、集まって来ない最大の理由は長期間の避難生活による疲労でしょう(寝ている人も多かった)。また、相談する前提の情報も不足しています。だから、給付制度等を説明するとか言って、何度も声をかけましょう。現地に負担をかけるなということの意味は、ボランティア側で考え、工夫するということです。派遣元の単位会で経験交流会等もあることでしょうから、そこで情報を得てください。

2 事前の準備

 法律の知識のついては他のところで勉強してください。で、行政の施策をある程度知っておきましょう。冒頭で紹介した首相官邸、岩手、仙台の弁護士会のHP、それと地元の特に広報はできるだけ目を通しておきましょう(HPからも入手可能な場合があります)。  仮設住宅が何時できるとか、入居要件等を聞いてくることも多いです。「行政に聞いてくれ」、ではなくて、一定のアドバイスができるようにしましょう。

3  相談の方式・・最初は授業・集団方式が有効です

 沢山集まってこられるし、義援金等の給付(今なら被災者支援法)の説明とか、被災者相談の内容も共通しているのも多いので、最初はほとんどこのやりかたでした。今回は、インターネットの利用等で広報が行き届きやすくなりましたが、相談希望者が多いときにはこのやり方が有効です。 個別の相談は別個に後で設定することが出来たらやったら良いでしょう。  阪神の時の初期にこの授業方式を知らず、個別相談をしていて時間が足りずに、「行列」で待っている人から不満が出たこともあったということでした。

4 避難所の回り方(自分たちで廻る場合)

 事前に連絡して行くのは基本としても、次のところへは、紹介の電話をかけてもらうとスムーズです(現地ボランティアから情報を得、あるいは誘導してもらえれば吉)。勿論、弁護士が来るということで、びびられてしまうこともあるのですが、こちらが電話で「部屋を一つ貸してください、後はすべてこちらでやります」と言うと、電話口の向こうから、ほっとするため息が聞こえます。ボランティアの重要な原則は相手(現地)に迷惑を掛けないこと。現場に色々頼まないことです。開催の校内放送等の依頼等も行ってから頼めば良いでしょう(受け手に余裕があれば、言わなくてもやってくれてます)。

なお、4月下旬に、ある郡山市内の避難所を飛び込みで訪問したら、受付の職員が、「市役所の職員等を名乗って変な人が来るんで・・」とびびられてしまったこともありました。勿論、目的等を告げたら安心してくれて、お茶を頂いたり、次の場所を紹介してもらったりもしました。

5 いつ行くのか(時間帯)土日の昼間に設定が吉

避難所には昼間は高齢者と子供しかいない。高齢者の悩みもゆっくり聞いてあげることも勿論重要ですが、動ける成人は後片付けや、仕事(探し)等で必死。なお、夜間はみなクタクタで、早く寝ようとして集まってこないことも多いでしょう。 勿論阪神の時、高齢者のみの避難所に行ったこともありました。相談を聞き、肩もみをして、持参した老眼鏡を渡して来ました。帰るときには、「めがね屋さんありがとう」と言われました!?

★義援金の支給手続がなかなか進まないようですが(阪神では2週間で配り始めた)、日弁連で、行政が機能していないところや、まるごと避難したところの行政に臨時職員を派遣するとか出来ないのでしょうか。これと、被災地に臨時に公設弁護士事務所をつくるなり、増員するなり。予算はこれから2年間日弁連会費1万円UPとかできないのでしょうか? 誰も反対しないと思います。  阪神の時、芦屋市長が大阪の弁護士だったので、被災の認定手続とか応援しました。今回もそのようなことができないでしょうか。

熊本地震を踏まえて改訂しなければならないのですが、相当先になりそうです。